2008年1月17日木曜日

無力

「キャインッ!」と犬の声がして振り向くと今まさに柴犬らしき犬が車に轢かれたところだった。
突然の出来事に戸惑ったがなんとかしなきゃと思った。だが彼は反対側の車線でぐったりしている。
右側からはどんどん車が来ていて渡れないでいると左側からもまた車が来てしまった。
ふたたび悲鳴のような声と「ドスンッ!」という音とともに犬は道端に倒れた。
その後も次々と来る車に轢かれる様を呆然と見ているしかなかった。
どの車も明らかに轢いたとわかるはずなのだがブレーキひとつ踏む事はなかった。
最後は声を上げる事も無くなく路上に倒れているだけになった。

思い切って車線に出て車を停めさせて急いで道の脇に犬を寄せた。
まだ温かい。まだ完全な死体ではないから当たり前なのだが。
息もしているような気がした。痛くて苦しいかも知れない。
いっそ一思いにとも思った。

首輪もしているからどこからか逃げてきたのだろうか。
4,5台に轢かれたが外傷は無かった。病院に連れて行けば助かるのだろうか。
だがもう見てられなかった。生きているのか確認するのも躊躇った。
アスファルトの上じゃやりきれないから植え込みの土のところに寝かせた。

俺にそれ以上なにができただろうか。
俺はその犬を放置した。
飼い主が探しにきて見つけてくれますように。
俺は何もできずその犬をそこに置き去りにした。